こんにちは、タイチです。
私はアメリカの大学で言語習得理論について勉強し、日本の大学院では認知言語学という分野の研究を行っていました。
その後、英語講師>日本語講師とキャリアを積み、現在に至っております。
まず初めに言っておきたいのは、子どもと大人では言語を習得するプロセスが異なるということです。
それぞれに適した方法があり、そこを間違えてしまうと思うように伸びていきません。
子どもは子どもの武器を、大人は大人の武器を使うのです。
この記事では、子どもがどうやって言語を身に付けるかについて解説していきます。
子どもの脳
子どもは天才です。
何もしていなくてもチヤホヤされ、時にはぶっ飛んだ絵を描き、人前で思いのままに感情をさらけ出し、
しまいには「1+1はどうして2になるの」のような哲学的な質問もしてくる。
そんな子ども脳はいったいどうなっているのでしょうか。
子どもは生まれてから5~6歳になるくらいまで、膨大な量の神経細胞(ニューロン)を脳内で作っていきます。
これが何をしているのかというと、今後この世界で生き残っていくために必要な情報をできるだけ多く吸収しようとしているのです。
この間、一般的には子どもは世界で話されているどんな言語音も聞き取ることができると言われています。
たとえば、私たち大人が外国語を聞いたときに最初にぶつかる壁は文節の壁です。
文字通り、メロディのように流れてくる言語音をどこで区切ることができるのかがわからないのです。
“Bobwenttothedepartmentstoretobuyanewjacket.”
言語音の切れ目がわからないと何もわかりません。
これならどうでしょう。
“Bob went to the department store to buy a new jacket.”
切れ目がわかると文の意味も理解できますね。(理解できなくても、英語っぽく見えますね。)
しかし、6歳になるくらいから脳の代謝活動や神経細胞(ニューロン)の数が減少し始め、12~15歳頃には横ばいになります。(この時期を臨界期と呼びます。)
これは情報を精査していると考えられています。
生まれてからの約10年間の間にできる限り多くの情報を収集しておき、その情報の中でも必要なものと不必要なものを分け、とりわけ今後も使わないであろうものは捨てていくといったイメージです。
ですので、この期間に英語の音を集中的に浴びせておくと、子どもの脳が「英語は必要」と判断し、そのあとの学習がスムーズになります。
どのくらいの情報量が必要か
結論から言うと、めちゃくちゃ必要です。
子どもは天才ですが、大人に比べて文字を認識する能力ははるかに劣っています。
そのため、子どもは音声情報を頼りに言語を習得していくのです。
一方、大人の言語習得では文字情報がより重要となってきます。
外国語を習得させる場合、学習を始めるのは早ければ早いほど有利になります。
また音声情報が重要である一方、視覚的な情報も学習を促進します。
それは、子どもは共同注意を通して、言語音とその音が指示するモノを特定しているからです。
共同注意
子どもが転んでひざを擦りむいたとき、親は子どもに駆け寄って「痛いねー、痛いねー」と言います。
この時、子どもは自身の体に生じている感覚(痛み)は”itai”という音で表現することを学びます。
このように、子どもと親が同じものに注意を向けること(この場合は擦りむいたひざの傷)を「共同注意」と言います。
子どもはこうした経験を積み上げていくことで、ある言語音が意味する概念を獲得していくのです。
(絵本の読み聞かせなどは共同注意するのにもってこいですね。)
この共同注意ですが、実は言葉だけでなく心も育ててくれます。
生まれたばかりの子どもにとって、世界は全て自分のものです。
「目に見えている世界=自分」のステージ1です。
言い換えると、この段階ではまだ「自分」という存在に気づいていません。
では、どのようにして「自分」を獲得していくのでしょうか。
「自分」の獲得にはまず「相手」が必要なのです。子どもは「相手」の存在を知ることで「自分」について気付くことができます。これが「自分と相手」のステージ2です。
ここまでくると、次は「自分」と「相手」と「もう1つ」という3つの関係のステージ3に入っていきます。
【ステージ2】
この段階の子どもは、親がバナナの方に視線を移しても、子どもの視線は変わりません。
親の方をみたままです。
【ステージ3】
親の視線に誘導されて子どもが視線をバナナに移したとき、共同注意が成立します。
この段階までくると、今度は子ども自身が興味のあるものを指さして「あっ!」と言ったりするようになります。ここでは、「好きなもの」と「好きじゃないもの」といった自身の意図や意志が芽生えてきます。
「自分」に意図や意志があるということは、「相手」にも当然、意図や意志があるということに気づきますね。
このようにして子どもは他者の心を理解できるようになっていきます。(心の理論と呼ばれています。)
少し話がそれてしまいましたが、ここまでの内容をまとめると、
・不必要な情報は処分していく
・文字情報よりも音声情報から言語を学ぶ
・共同注意により自分以外の人やモノを認識し、それらとのやり取りの中で言語を習得する
以上のことから、子どもが言語を習得する上で必要なのはインプットだということがわかります。
では、このインプットがなかった場合、子どもの言語習得はどうなってしまうのでしょうか。
少しショッキングな内容ですが紹介します。
ジーニーの例
ジーニーは生後1歳2ヶ月頃に病院で「発達が遅れているかもしれない」と診断され、その後、父親に部屋に監禁されてしまいました。
ジーニーは暗い裸電球一つの寝室で拘束された状態で放置されました。
父親はジーニーが少しでも音や声をたてると彼女を殴りました。
父親はジーニーとやり取りをする際には一切言葉を使いませんでした。
ドアの外で父親が唸ったり吠えたりする音が、ジーニーが聞いた殆ど唯一のものでした。
母親は目が悪く、父親に逆らったり助けを呼ぶこともできませんでしたが、ジーニーが13歳半になったころ、父親との口論の末、ジーニーを連れて家を脱出することができました。
その後、ジーニーは知的障碍者センターで生活を始めました。
通常の子供の場合、二語文(「ママ、ありがと」「これ、ほしい」など)を話せるようになると、そこから一気言語習得が加速しますが、ジーニーの場合はそこから先の進歩がなかなかみられませんでした。(出典:Wikipedia)
プサメティコスの禁じられた実験
これは実話かどうかはわかりませんが、ギリシャの歴史家ヘロドトスが書いた話の中に次のようなものがあります。
エジプトのプサメティコスⅠ世は、地球上に初めて誕生した人間がどの民族で、何語を話したのか疑問を抱きました。
さらに、人間が最初から持っている先天的な能力と成長過程で身に付けていく後天的な能力が何であるかについて知りたいと考えました。
そこで禁じられた実験を行いました。
その実験とは、生まれたばかりの赤ちゃんを社会から隔離し、成長に必要な最低限のサポート(食事など)だけを与えて育てることです。
その結果、最初に発した音が”Bekos”で、フリギア語で「パン」という意味だったことから、地球上最初の民族はフリギア人だと結論付けたということです。
いかがでしたか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次は「大人の言語習得」について書いていきます。
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