日本語教師になりたいあなたへ ~なる前の準備・働き方・なってから~

日本語教師になりたいあなたへ

こんにちは、たいち(@taichi_kun51)です。

この記事では日本語教師を目指している方に、日本語教師とはどんな職業なのか、どんな働き方があるのか、なるまでの準備、なってからのことについて、3年間台湾で日本語教師を務めた僕の感想を伝えようと思います。

《日本語教師に関連するプロフィール》大学時代:言語学専攻
大学院時代:認知言語学専攻
日本で社会人:独学で日本語教育能力検定試験に合格
台湾へ移住:日本語教師(3年)
現在:オンラインで日本語教師&日本語教育コミュニティ運営

僕が日本語教師になるまで

僕は子どもの頃から言葉が大好きで、国語の授業や英語の授業はいつも真面目に授業を聞いていました。

たまたま(?)学年の中でも英語の成績は常にトップクラスだったので、外国語大学に進学し、言語について学ぶ言語学の授業をたくさん履修していました。

そのまま大学院に進学し、言語と心の関係を探る「認知言語学」を専門に研究していました。

修士号取得後は一般企業に就職しましたが、それでも言葉に対する好奇心は収まらず、日本語教師への転職を決めました。

ここまででもわかる通り、僕は言葉が好きだったものの、初めから日本語教師を目指してはいませんでした。むしろそんな職業があることすら知りませんでした。笑

転職を決めてから

国内で日本語教師なるためには、基本的には①養成講座で420時間②日本語教育能力検定試験に合格のどちらか、もしくはその両方が必要です。

大学と大学院である程度言語知識を身に付けていた+養成講座に通う時間もお金もなかった僕は、日本語教育能力検定試験に合格する道を選びました。

そして合格後は海外で働こうと決めました。
(海外の方が条件が緩いからです。)

その時に使用していた教材はこちらです。

日本語教育能力検定試験 完全攻略ガイド 第5版

検定試験合格を目指すならこの本はマストです!
内容も常にリニューアルされていて、今回で第5版となっています。

僕の大学の教授にもお薦めされた本で、実際に受験会場ではほとんどの方が試験前にこの本を開いて、最後の確認を行っていました。

新版 合格するための問題集

とにかく問題が豊富です。

「完全攻略ガイド」でインプットを行い、こちらでアウトプットすると効果的です。

アウトプットした後は再度、「完全攻略ガイド」に戻って、間違えた部分をしっかりと復習しなおしてください。

こうすることで、定着度が変わってきます。

僕は毎日約2時間勉強して2回目の試験で合格することができました。

1回目はあと2点足りませんでした…

日本語教育能力検定試験の結果が出るのは12月下旬です。

試験には必ず合格するつもりで挑んだので、すでにその時の会社には年度が切り替わるタイミングで退職することを伝えていました。

無事に合格できたので2月いっぱいで退職し、そのあとすぐに台湾の日本語学校に履歴書を送っていきました。

その時に利用した求人情報サイトはこちらです。
日本語教師の集い

僕の場合はめちゃくちゃ運がよく、就活開始から3日で台湾での就職先が決まりました。

どうして台湾?

日本語学校は東南アジアを中心に多く展開されていますが、台湾を選んだ理由は以下の通りです。

1.日本から近い
2.安全
3.旅行で4回くらいすでに訪れたことがあった
4.台湾人の友達がいる
5.漢字だから何とかなりそう…
6.女の子がかわいい

中国語は全然話せませんでしたが、「漢字だからまぁ何とかなるだろう。いざとなれば友人を頼ろう。」という楽観的思考で台湾で就職することを決めました。

日本語教師としての働き方

日本語教師として働くには大きく分けて3つあると思います。

①専任として働く
②非常勤として働く
③オンラインで副業として働く
*ここでは給料が発生することを前提としているため、ボランティアは省くこととします。

僕はこれまで専任とオンラインを経験してきました。

また専任として働いている中で、非常勤の先生とも交流する機会があったので、その点も踏まえてそれぞれのメリットデメリットおよび、デメリットに対する解決案について、僕なりの意見を書いていこうと思います。

専任として働く

メリット:給料が安定、スキルアップ
デメリット:拘束時間が長い、給料が割に合わない

✔メリット専任のメリットは当然ですが毎月の給料が安定していることです。また基本的に、拘束時間は職場にいることになるので、他の先生方との意見交換や勉強会などを通して」教務力のスキルアップが図れるのは魅力的です。
✔デメリット
僕が感じるデメリットは拘束時間が長いことです。一般企業で働くと当然のことですが、1日中拘束されると自分の時間が取れないので、多趣味の方には辛く感じるかもしれません。
また拘束時間中は会議や学校のイベント企画など、授業とは関係のない業務まで入ってくるので、授業の準備は拘束時間外にすることになってします。ここが日本語教師は仕事量に対して給料が割に合わないと言われる所以だと思います。

非常勤として働く

メリット:好きなように働ける
デメリット:給料が少ない、横のつながりができにくい

✔メリット
非常勤のメリットは授業時間以外は拘束されないため、自分の好きなように働けるというところです。また、日本語教師以外にも仕事を持つことが可能なので、日本語峡単体での収入は少なくなりますが、収入源を増やせるという点ではかなり大きなメリットになります。
✔デメリット
デメリットは専任と比べると給料が少ないというところです。また、基本的には授業があるときしか職場に行かないので、他の日本語教師とのつながりが希薄になる傾向があります。
授業でつまずいたときなどは、全て自分で解決していかなければなりません。

オンラインで副業として働く

メリット:好きなように働ける、自分で給料を設定、学生を選べる
デメリット:給料が安定しない、横のつながりができない、スキルアップが難しい

✔メリット
こちらも非常勤同様、自分の好きな働き方ができる点が第一のメリットとして挙げられます。またオンライン講師の場合、上で書いたような資格は基本的に必要ないので、手っ取り早く始めることができるのも魅力的です。さらに、自分で時給を設定できる点や、教える学生を選べるのもオンラインならではの魅力です。
✔デメリット
デメリットは自分で学生を集めなければならないところです。自己紹介動画をつくったり、SNSで発信したりなど、ファンをつくることが大切になってきます。日によって授業の数も異なるため給料も安定しませんし、また横のつながりもないため、スキルアップなどが難しい傾向にあります。

以下の記事ではオンライン教師として働く場合のコツを紹介しています。
気になる方はどうぞ。

結局オススメの働き方は?

ここまで専任、非常勤、オンラインと3つの働き方についてみてきましたが、個人的にお薦めする働き方は非常勤からオンラインへの移行です。
理由は大きく分けて2つあります。

①非常勤として所属先をもつことで横のつながりができる。
②「日本語教師一筋」の働き方は今の時代に合わない。

やはり日本語教師として働く以上は横のつながりはあったほうがいいと思います。

意見交換や教材のシェアなど、いろいろメリットがあります。

ただそれよりも伝えたいことは、日本語教師以外の働き方も確保しておいた方がいいということです。

巷では「日本語教師は給料が割に合わない」という意見が多くありますが、実をいうと、それは「教えることだけ」で稼いでいるからです。

確かに、専任教師の場合は時代遅れな副業禁止などの就業規則があるため、教えること以外に選択肢はありません。

ですが非常勤やオンライン教師であれば、日本語を教えること以外にも稼ぐ方法はたくさんあります。

れも日本語教師としての知見を活かした稼ぎ方ができます。

気になる方はこちら。
https://taichikun-blog.com/for-japanese-teachers/

このような理由から、日本語教師として働くなら、非常勤で経験と横の繋がりを得てからオンラインに移行するのがいいと思います。

日本語教師になる前となってから

僕が日本語教師を目指し始めた頃にしていたことと、日本語教師になってから感じた反省点です。

まず、日本語教育能力検定試験に合格するために必要な知識の詰め込みを行いました。

日本語教育の歴史、教授法、シラバスの作り方、日本語教育の状況など、あらゆる文献を読みあさったり、文化庁のHPから日本語教育に関する資料などに目を通していきました。

これらの勉強は新しい発見もあり個人的には楽しかったのですが、実際に日本語教師として働き始めるとほとんど活用しない知識ばかりです。

活用しないばかりか、ベテランの日本語教師の方でもそこまで詳しくないことが多いです。

知識の詰込みはあくまでも「試験に合格するため」と割り切ったほうがよさそうです。

日本語教師駆け出しで苦労したこと

ここでは日本語能力試験に合格し、就職先も決まり、いざ実際に教えていくことになってから苦労したことをまとめていきます。

大きく分けると4つあります。

1.語彙コントロール
2.方言の封じ込め
3.教案
4.導入・活動・練習方法

1.語彙コントロールについて

語彙コントロールとは、主にこれまでに学習した単語と文型を使って話すスキルのことです。

これができるようになるためには、使用する教科書の構成や流れをきちんと把握しておかなければなりません。

学生がまだ学習していない文型や語彙を避けて、すでに学習した表現に言い換えることが必要です。

当然学生のレベルが上がってくるにつれて、語彙コントロールも調整していく必要があります。

ここで難しいのは簡単な表現に言い換えることです。

慣れてくれば自然にできるようになりますが、不安な場合は授業で話す日本語も予め準備しておかなければなりません。

2.方言の封じ込めについて

日本語教育では基本的に標準アクセントが採用されています。

僕は大阪出身ということもあり、授業でもなかなか大阪弁が抜けませんでした。

特に数字が難しかったと記憶しています。

ですが、大阪弁は学生にも人気があるので、たまに授業の中で大阪弁を紹介したりして息抜きをしていました。

3.教案について

教案とは、文法の教え方、練習方法、活動内容、学生からの予想される質問などを事前に準備しておく教師用のメモのことです。

おそらくほとんどの日本語教育機関で教案の作成が義務付けられていると思います。

僕も初めの頃は細かく教案に書き込んでいましたが、あまり意味がないことに気がつき、途中からは「提出用」として手を抜いて作成していました。

というのも僕の場合、細かく書けば書くほどそれを覚えようとしてしまい、万が一授業中に忘れてしまったら、授業の流れが完全にストップしてしまうと思ったからです。

細かく書くより、授業の流れを箇条書きでメモしておく程度の方が自然なパフォーマンスができると思ったので、教案を真面目に書いていたのは最初の1か月だけでした。

4.導入・活動・練習方法について

学校の方針にもよると思いますが、ほとんどの日本語教育機関では教師力を養うために以下のような過程が想定されています。

教師力をアップさせるプロセス

①まず自分で考える
②授業で試してみる
③反省・修正をする
④他の教師にアドバイスをもらう

当然、自分で考えることはどんな仕事においても一番重要なことですが、日本語教師の場合は最初から「④他の教師にアドバイスをもらう」のがいいと思います。

パクれるものは全てパクってしまえばいいのです。

同じ教材、同じ練習方法を採用していたとしても、全く同じ授業はできません。

最初からオリジナリティを追求するのではなく、パクったものを授業に取り入れる過程でオリジナリティを出していけばいいのです。

ですが残念なことに、まだまだ日本語教育界隈では人の授業をパクることは推奨されておらず、いつも「自分の色」「新しい練習方法」を出すことが求められます。

でもよく考えてみると、これまで何万人もの方が日本語教師として働いているのに、そこから初心者が全く新しいものを出すなんて不可能に近いと思います。

文型の導入、練習方法、活動など、世の中にはすでに様々な書籍や教材が出回っており、それをうまく活用できれば何の問題もありません。

授業で大切なのはオリジナリティではなく、学生が日本語を使えるようになることです。

僕もこれまで自分が作ってきたものをダウンロードできるように公開しています。

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日本語教育お役立ちサイト

初期の頃に意識しておくべきこと

日本語教師になってから特に最初の頃に意識しておくべきことを3つあげます。

1.信頼構築
2.常に100点の授業をする
3.学生とのコミュニケーション

1.信頼構築について

初めの頃は学生もあなたが新人教師だということを認識しています。

ということはまずは学生との信頼構築が最重要課題です。

信頼関係がなければどんなに素晴らしい授業をしても相手には響かないからです。

逆に信頼関係さえ成り立っていれば、多少授業が上手くいかなかったとしても学生にはその先生から学ぶ姿勢があるので、なんとかなります。

信頼を構築する上で必要なことは2つだけです。

徹底的に準備する
経験が豊富な先生方は授業で詰まったとしても、うまく回避するワザを持っています。こればっかりは経験がないとどうすることもできません。経験がない新米教師は準備力で経験不足を埋め合わせるしか方法はありません。
変にごまかさない
先生という立場になると、ダメとは分かっていながらもついつい知ったかぶりをしてしまいます。学生からの突然の質問に答えられないときは素直に「今は答えられないから、次回までに準備しておく」と伝えたほうが好印象です。
実際にベテランの先生でも、理屈ではわかっていても学生への伝え方が分からないときがあります。ここで無理して解説をしてしまうと、かえって複雑な回答になり余計に学生を混乱させてしまうことになるので、即答が無理そうな場合には「自分の宿題」として、整理してから再度伝えるようにしましょう。

2.常に100点の授業をする

これは上述した「準備を徹底的にする」ということとほとんど同じです。

どの学生、どの先生が見ても完璧な授業というのは不可能に近いですが、自分の中での「完璧」であれば実現は可能です。

要はベストを尽くすということです。

以下は僕が使用していた自己授業評価項目です。

1.クラスの雰囲気:全員が発言をし、笑いがあり、楽しそうだったか
2.理解度:8割以上の学生が理解してくれたか
3.流れ:導入→練習→活動までの流れがスムーズだったか

項目はこの3つだけです。

主観でいいので授業が終わったら自己評価を行います。

たま~にですが100点が出るときがあります。

それは「もっと上手にできる先生はいるだろうし、自分もスキルを磨けばもっと上手にできるだろうけど、今の自分にとってはベストパフォーマンスだった」というものです。

振り返りにもなるので、授業後は必ず自己評価を行いましょう。

3.学生とのコミュニケーション

結論から言って、学生とのコミュニケーションがしっかりできていれば全てOKだと思います。

授業中はもちろん、授業前と授業後、休み時間など、友達感覚でもいいですし、日本語を使わなくても構いません。

とにかく学生とのコミュニケーションを大切にしましょう。

これは「ただの雑談ではなく、意味のある雑談をしましょう」ということです。

意味のある雑談とは、①学生のことを知る②学生の母語について知る③学生の国の文化や習慣について知ることです。

これができると信頼構築だけでなく、生きた文型導入や練習ができるようになります。

学生の生活に寄り添った形で導入したほうがその後の定着もかなり変わってきます。

「いい先生」とは

最後に「いい先生」とは何でしょうか。

よく言われるのは、臨機応変に対応ができて、文型知識があって、教職に対して使命感や責任感があって…といったことが挙げられますが、これらは先生から見た「いい先生」の定義だと思います。

他の先生からの評価は日本語教育においては本質的なものではありません。

一番重要なのは学生がどう感じているかです。

僕が思う「いい先生」とはずばり、「学生に好かれる先生」です。

美女、イケメン、おもしろい、声が優しい、雰囲気が温かい….日本語に関係のない要素でも構いません。

とにかく学生に好かれさえすれば「いい先生」になることができます。

あなたもこんな経験がありませんか?

「あまり好きな授業科目じゃないけど、先生が好きだから頑張った」
「親の喜んだ顔がみたいから、苦手だけど一生懸命頑張った」

人間は好きな人からは学ぼうという意識が働く生き物です。

逆に相手がどんなにすごい人でも、嫌みな人からは学ぼうという気は起きません。

自分の長所を生かして学生に好かれる先生になってください。

そうなれば必ず学生はあなたに付いてきてくれるはずです。

余裕があれば

1.パソコン操作

日本語教師として働いていると、どうしても自分で教材を作る場面が出てきます。

そんな時にエクセルやパワーポイントがある程度使いこなせると、作業がスムーズに進みます。

エクセルであれば、セルの結合や印刷の設定、パワーポイントであれば文字装飾やアニメーションの設定など、最低限の操作は押さえておくといいと思います。

2.学生が話す母語の学習

言語習得には必ず母語干渉があります。

母語干渉とは習得したい言語に対して、母語のルールをあてはめてしまい、不自然な表現を作ってしまう現象です。

例1)表現レベル
「我常常去的店」は「私がよく行くお店」という意味ですが、中国語では名詞を修飾する際に「的」を使用します。これは日本語の「~の」に当たる表現です。これが干渉を起こし、「私がよく行くのお店」という日本語が出てきてしまいます。
例2)語彙レベル
日本語では「薬を飲む」というところを、中国語では「吃薬」と言います。「吃」は「食べる」という意味なので、これが干渉を起こし、「薬を食べる」という日本語が出てきてしまいます。

このように母語干渉は様々な場面で見られます。

個人的には、逆に母語干渉をどんどん起こしてもらったほうがいいと考えています。

母語干渉が起きるということは、学生は母語と日本語を照らし合わせながら発話しているということで、少なくとも母語のルールを用いることで未習の表現でもとりあえずは言えてしまうからです。

言語習得にはチャレンジする勇気大量のアウトプットが必要なので、多少間違っていても発言するに越したことはないのです。

ですが、教師が学生の母語について知らなさすぎると、どうしてそのような間違いが起きているのかが分からなくなります。

母語についてある程度の知識があれば、未然に防ぐこともできるし、論理的に説明することもできます。

導入する文型や単語だけでも、学生の母語ではどのように表現するのかまで押さえておくと、より良い授業ができるようになるはずです。

おわりに

いかがだったでしょうか。

ここまで書いたことは全て僕個人の考えであり、当然異論のある方も多いでしょう。

一口に日本語教師といってもいろいろな働き方があること、教案や授業準備に対する考え方、「いい先生」の定義など、先生の数だけ考え方もあると思います。

最後にもう一つ厳しい意見を付け加えておくと、普通に日本語教師をしているだけでは何も成長しないということです。

オフラインでの授業は今後も根強く残っていくとは思いますが、コロナの影響もあり、今後はますますオンライン授業への移行が加速すると予想します。

今は日本語教師の経験がない素人でもオンラインで教えられる時代なので、「教えることしかできない」教師は必然的に淘汰されていくでしょう。

そうならないためにも、教えること以外のスキルも身に付けて、淘汰されない稼げる教師になりましょう。

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